あやしい




 春のコンクールで異例の普通科からの出場者、ということで、最初は取材対象者だった。

 でも同じ普通科という仲間意識なのか、馬が合うのか、コンクールも終わりに近づいてきた今、以前から付き合いがあったかのような「友達」枠に収まっている。お互いそれを何とも思わずにいるから、改めて言う必要もないかとも思う。


「あ、いたいた、日野ちゃ・・・」

 森の広場。

 日当たりのいいそこは、昼や放課後に生徒がたくさんいる。広いのはいいけど人を探す時は大変なんだよねと二人で笑ったこともあったっけ。

 そんな大変な人探しを終えた天羽は、香穂子に話しかけようとして口をつぐんだ。

 香穂子が何かを真剣な様子で見ているからだ。

「何見てんだろ・・・」

 職業病というべきか元来の性格なのか、こういう場面に遭遇すると、彼女が何を見ているのか知りたくなる。

 静かに香穂子の背後に回る。

 その視線の先にいたのは。


(月森くんだ)


 珍しく森の広場で練習しているらしい月森を、香穂子はただじっと見ているのだった。

 ヴァイオリン・ロマンスとか噂もあるし、音楽科棟に行くと「月森の音が変わった」という話を耳にする。

 そして香穂子の視線。


(これって・・・そう、なんだよね?)


 お互い、相思相愛ってヤツじゃないの?と思ってしまう。

 でもお互いにそれは認めない。

 月森に至っては、自分の音楽が変わりつつあることに不安さえ覚えるようだ。・・・香穂子の話を総合した結果だから定かではないが・・・


「アヤシイ」

「うわっ!・・・天羽ちゃん?!」

 ちょっともうおどかさないでよ!と抗議するのを笑って誤魔化す。もう、と頬を膨らませるが本気で怒っているわけではない。

「月森くん、なんだか最近音が変わったらしいじゃない?」

「えっ・・・」

 見てたの?!と慌てふためいてももう遅い。

「すっごく真面目な顔してたから声かけそびれちゃってね。ついでだから何見てんのかなーっていう興味だったんだけど」

「あ、天羽ちゃん・・・」

「あんたたちは認めようとしないけどさ、私はあんたと月森くんがくっついてくれたらいいなって思ってるわけよ。友人としてね」

 歩くネタ同士でくっついてほしいなんて思ってない、なんて余計な一言は滑らせない。



「ま、今はいいけどね」

 コンクール終わったら、そっちも決着つけたら?とだけ残し、用事は済ませられなかったが明日もあるしと諦めて歩き出した。 

 

 

 

2010.10.3UP