僕と君のジャスティス

 




 

 まだ自分たちには高校生という肩書きがある。
 未成年。親の元で正当な保護を受け「育ててもらっている」。
 あと一年と少しでそれなりに自立した生き方を選ぶこともできるけれど、おそらく二人はそれを選ばない。
 だから、さらにその期間は延びることになる。



「・・・たまに」

 だいぶ寒くなった帰り道。アンサンブルの練習も順調で、他の仲間にメールを打っていた香穂子がぽつりと呟いた。

「ぜーんぶ放り出したい時って、ない?」

「ヴァイオリンもか?」

 うん、と香穂子が頷く。

「ヴァイオリンも、学校も、今の生活を全部なくして、まっさらになるの」

 月森が指先を顎に当てて考え込む。

「ヴァイオリンも、となると、そこまでは思わない」

 やっぱりそうだよね、と苦笑う。

「月森くんは、やっぱりヴァイオリンあってこそだもんね」

「ああ。しかし、どうしてそんなことを思うんだ?」

 んー?と携帯をポケットにしまいながら、のんびりと月森を見上げた。

「このまま、どこかにさ。全部置いて、どこかに行っちゃったら、どうなるんだろうって」

 月森が小さく目を見開いた。
 突飛な事を言い出すのはよくあることだからそれなりに慣れてきたつもりではいたけれど。

「何故そう思うんだ?」

「何となく、かな」

 彼女なりに何か思う発端はあったはずだ。それを言わないということは、自分に関係するということか。
 今までの自分の言動を思い出してみて、ひとつだけ、心当たりがあった。



 留学を決意して、彼女にそれを告げ、頑張ってねと笑ってくれた。
 あの時はいつもの笑顔に見えたけれど、実はそうじゃなかったのかもしれない。

「・・・君と、俺の歩く道は、違う。それは俺と君が別々の人間だから。だけど、同じ道を歩く選択はある。君という存在が隣にあるのならば、俺はそれを誇りに思う」

「何だか難しい話になっちゃったね」

 ごめんねとすまなそうに「今の忘れて」と笑った。

「でも、そう言ってくれて、嬉しい」




 
 交わるかもしれない。
 交わらないかもしれない。
 それでもいつかどこかでお互いの道が交差することを信じていたい自分たちは、その程度には幼い。
 けれど。
 本当にそうなったらいいと願う。
 月森と香穂子の、正義感を時々凌駕する想いをなかったことにはできない。
 二人とも、お互いに潜む熱を知ってしまったから。
 だから、二人で分け合うのだ。
 











ヒトリゴト。(ブログより

ジャスティス。訳すまでもなく「正義」という意味ですが、意味合いが広範囲すぎて難しすぎました。
この場合は二人の真面目さだとか、大人に庇護されているという立場であること、などを言いたかったであります、が・・・書きながら訳わかんなくなってきた(泣
 

2010.12.5UP

 

2011.4.26UP