ふと緩んだ口元

 




 見てしまった。




 今日は私だけ練習で、月森くんは新しい楽譜に挑戦するとかで譜読みをしている。

 集中したい時に私がヴァイオリンを弾いていたら気が散るんじゃないかと言ったら「大丈夫だ」の一言で一蹴されてしまった。

 そう言うのなら・・・と練習を始めるうちに、そんな心配もすっかり忘れて没頭してしまい・・・


「あー、肩痛い・・・」

 ちょっと力が入りすぎたみたいだ。

 いつもなら月森くんが素早く指摘してくれるけど、と思いかけて思い出した。

 月森くん、今譜読み中だ。

 独り言、結構大きい声で言った気がする・・・

 そろそろと月森くんのほうを見ると。

「・・・寝てる」

 珍しく眠っていた。

 楽譜を片手に、すっかり眠りこんでいる姿を見るのは珍しい。というか初めてかもしれない。

 ヴァイオリンをケースに置いて、そうっと近寄ってみる。

 今の大きな独り言にも反応しなかったから、眠りは深いのだろう。

「髪、さらさら。それに、綺麗な顔」

 どれを取っても整った顔。眠っているからか、少しあどけないような感じがする。

「かわいいなー」

 思わず頬に触れた。

 ピクッと少し動いたけれど、起きる様子がない。

 調子に乗って触っていると、月森くんが身じろぎした。

「う・・・」

 手を離そうとしたら、案外強い力で掴まれた。

「お、お、起きてたの?!」

「ああ」

「いつから・・・?」

 至近距離で見つめられるとドキドキしてしまう。

 この琥珀色の瞳にさえ、私は弱い。

「肩が痛いと言ったあたり」

「最初からじゃない!」

「で?」

「え?」

 月森くんがニヤリと笑った。

「なにが『かわいい』だって?」

「・・・!」

 固まった私を、月森くんの腕がふんわりと回された。

 月森くんの体温が心地いい。

 微かに香る月森くんの匂いがする。

「教えてくれないか、香穂子」

「・・・やだ」

 恥ずかしすぎて言えるわけがない。

 ふ、と月森くんが笑う気配がした。

「君の寝顔のほうが遥かにかわいいと思うが」

「!・・・っていうか私の寝顔なんていつ見たの?!」

 がばっと身を起こして月森くんを見ると。

 笑っていた。

 すっごく、すっごく綺麗な笑顔。

 存外に月森くんの笑顔を間近で見てしまったから、私はもう視線を逸らせない。

 その笑った顔のままで、月森くんが小さく囁いた。


「ひみつ」








ヒトリゴト。(ブログより


お題外してる・・・うわあん(泣

このお題を見て浮かんだのが、アニメのあるワンシーンでした。

うーんそれ二次創作じゃないし・・・と思いつつ書き始めたら、こうなりました・・・