アンサンブル

 




 

 頭を抱えた香穂子が「うーん」と唸った。
 図書室で課題を片付けていたのだが、どうにも終わらない。

「もっと真面目に授業聞いとけば良かった・・・」

「今更言っても遅い」

「・・・はいその通りでございますう・・・」

 がっくりと机に突っ伏した。

「課題終わらないのか?」

 ひょっこりと顔を出した土浦が、香穂子の隣にいた月森の姿を認めて苦々しい表情になった。

「隣に教えてもらえばいいじゃないか」

「それを彼女が良しとしない」

「へえへえ」

 呆れたように一つため息をついて「何の課題だ?」と覗き込んだ。

「ああ、数学の。俺んとこは今日終わったぜ」

「ホント?!」

 ああ、と土浦が頷いて「どこがわからないんだ?」と尋ねるのを、月森は面白くない気持ちで眺めていた。 

「・・・おや、お揃いで」

 日野さんの声が聞こえたから、と言いつつ土浦が現れた所から、今度は加地が顔をのぞかせた。

「今日の課題?何だ、聞いてくれたら僕もう終わったから見せてあげたのに」

「加地くん、いつのまに終わらせたの?」

「プリントもらった時点」

 早すぎる、とその場にいた誰もが思ったことを察知したのか「だって早く終わらせれば、日野さんとたくさん話せるでしょ?」としれっと言う。

「・・・お前のそのオープンさは、見てていっそ清々しいぜ・・・」

「そう?」

 前回の笑顔で月森の正面に座る。

「プリント、教室にあるから取ってこようか?」

「いや、それなら俺が教えたほうが早い」

「・・・両手に花どころか、抱えきれてないね」

「天羽ちゃん」

 書棚の端からそうっと顔を出してこの状況を眺めていた・・・盗み見とは言わせない・・・天羽が「やっ」と顔を出した。

「香穂、あんたの周りにはいっつもイイ男がウロウロしてるよねー」

「天羽ちゃんっ!」

 ガタンと音を立てて立ち上がった香穂子に、周囲から白い視線を浴びせられて「・・・すいません」と小さく謝って座りなおした。

「で、何やってんの?」

「うちのクラスで数学の課題を出されたんだけど、それをやってる最中」

「ふーん」

 土浦と香穂子のクラスは数学教師が同じなので課題やら進行状況が殆ど同じだ。だからこの課題も既に終わった土浦に聞けば答えは一発でわかるのだが。

「でも一人でやらないと、自分の為にならないから。どうしてもわかんなかったら、お願いします」

「いい心がけだな。頑張れよ、日野」

「日野さんってスゴイね。僕で良かったらいつでも・・・」

「・・・・・・」

 三種三様の反応に、見ていた天羽が派手に吹き出した。

「やっぱ、香穂ってスゴイわ」

「・・・何で?」

 いやいや、とひらひら手を振って、天羽が月森の反対側、香穂子の隣に座った。

「ところであんた、この後ヒマ?駅前通りに新しくできたカフェのケーキ食べに行かない?」

「行く!」

 また大きな声で言ってしまったせいで、今度は司書から「そこ静かにね」と窘められた。

「どうせなら皆で行こ?」

「・・・このメンツで?」

 うん、と香穂子が嬉しそうに笑った。それを見ていた月森が盛大なため息をついた。












ヒトリゴト。(ブログより

アンサンブル、という言葉には数学用語で「集合」という意味があるんだそうです(ウィキペディアより)。
で、2年生ズ大集合。
なかなか書いてて面白かったです、はい。
 

2010.12.4UP