| ソロ(独奏) |
ソリストってどういう気分なんだろう。
学内コンクールは一人だったけれど、いっぱいいっぱいでそんな気分を味わう余裕なんて全くなかった。
「・・・妙なことを聞くんだな」
そんなことを考えながら森の広場を歩いていると月森に会った。思ったことを率直に聞いたら「妙だ」と言われてしまった。
「それとも、ソリストとしてやっていこうと思っているのか?」
「そこまではまだ・・・でも、可能性の一つとしては、無きにしも非ずかなあ」
「随分、自信がないようだが」
「だってまだヴァイオリン初めて間もないし、この世界のこと知らないもの」
ああ、と月森が頷いた。
「そうだったな。・・・ソリストとして身を立てるには、相当の技術が必要だ。それと、意志の強さ」
こう表現したいと思えば、周りの声に流されることなく、自分を貫く。
そんな意志の強さが必要だと、月森は言った。
「君には、知識と技術が必要だろう。・・・参考になっただろうか」
「うん、ありがとう」
じゃあ後で正門で、と言いかけて、月森が「・・・その」と呼び止めた。
「どうしたの?」
「・・・ここで、弾いてもらえないだろうか」
「ヴァイオリン?」
ああ、と月森が頷いた。
「? ・・・いいけど」
ありがとう、と月森が微笑んだ。
選曲は任せると言うから、少ないレパートリーからチョイスして、ヴァイオリンを構えた。
「・・・この曲は・・・?」
月森は知らない曲だろう。原曲はポップスだから。
それでも、黙って耳を傾けてくれている。
それだけで、心強い気持ちになれた。
たった一人の観客の為に弾くその曲は、人前で弾いたのは初めてだが、とてもうまく弾けたと思う。
ぱちぱちと拍手が沸いた。
驚いてヴァイオリンを下ろすと、月森だけではなく、二人の周囲に人だかりができていた。
「俺、その曲好きなんだー」
「ヴァイオリンで聴くと、すっごいイイね!」
「ちょっと感動して涙出てきちゃったよ」
口々に賞賛の言葉を浴びせられて、香穂子が驚いて後ずさる。
皆共通しているのは、笑顔だということだ。
「・・・こういう、こと・・・なのかな」
ソリストって。
傍らに立った月森が「わかっただろうか」と囁いた。
「こうして感動してくれることが、ソリストとしての最大の喜びじゃないか?」
「うん・・・うん。そうだね」
照れくさそうにはにかんでペコリとお辞儀をした。
ヒトリゴト。(ブログより
月森がその場で弾かせたのは、周りに聴いてもらうため。
そうやって得た評価を全て良くも悪くも一人で負うということを知ってもらう為です。
ちょっとわかりづらかった、かな?
2010.11.23UP