| Ich will Sie sehen. |
「うう〜」
自室で楽譜と睨み合いをしていた香穂子が、観念してばったりとベッドに突っ伏した。
「月森くんに教えてもらえないかなあ・・・」
音符としてはわかるのだ。
けれど「音」として弾いてみないと確実に理解できない香穂子には、楽譜だけで音を理解することは難しい。
もう夜中だからヴァイオリンを弾けない。けれど明日までの月森からの課題だから、明日までにはどうにかしたい。
「・・・電話」
もう休んでいる時間だろうか。時計の針はもうすぐ長針と短針が真上で重なろうとしている。
「メールで聞いてみよう」
それで返事が返ってこなければ諦めて、明日は朝練をしよう。
ぽちぽちとメールを打ち、送信ボタンを押した。
やっぱり寝てるかも、と思い始めた頃。
携帯が鳴りだした。
「どうした?」
メールではなく電話がかかってきて、驚いてあわあわとする香穂子に小さく吹き出した。
「メールでは要領が悪い。電話のほうが早いだろうと思ったんだが、すまない、迷惑だっただろうか」
「えっ、ううん、迷惑じゃないよ!私のほうこそごめんね、こんな遅くに・・・」
「いや、いつもこの時間は起きているから大丈夫だ」
「え・・・」
なんとなく、月森の個人的な部分を覗いてしまった気がする。
学校でしか知りえない月森蓮ではない、ということに、なんとなくドキドキしてしまった。
「・・・どうかしたのか?」
「えっ、・・・ご、ごめん何でもない!」
何でもなくはないのだが、気持ちを立て直して今までうんうん唸っていた部分を教えてもらう。
「ありがとう、助かった〜!」
「宿題を出した俺が教えては宿題にならないな」
「はいゴメンナサイ」
「次回はないから、そのつもりで」
「ええええー!・・・はい、わかりました・・・」
ヴァイオリンや音楽に関して月森が妥協をしないのは、香穂子の為なのだとわかるから。
だから香穂子もそれに応える為に頑張るのだ。
何よりも、自分がヴァイオリンが好きだから。
「月森くん」
「・・・何だ?」
電話の向こうの月森は、穏やかで、優しくて。
少し掠れて聞こえるその声を、もっと聞いていたい。
「会えたらいいのにな」
「・・・・・・っ」
月森が息を呑んだ。
おそらく電話の向こうで顔を真っ赤にしているに違いない。
そして、香穂子も。
「え、あれ、あっ・・・あの、私、今何言った?!」
「・・・君という人は・・・」
盛大なため息が聞こえる。
「また明日も会うだろう」
「うん・・・」
「それじゃ」
「うん」
お互いにお休みと言い合って電話を切る。
会いたい。
あの穏やかな声で自分を呼ぶ月森に、そう願うのは・・・「恋する乙女」だからだろうか。
「・・・おやすみ、月森くん。また明日」
フリップを閉じた携帯に向かって呟いた。
ヒトリゴト。(ブログより
言葉の意味は「逢いたい」だそうです。
付き合う前にも、後にも取れるかなあ・・・と思いつつ書いてました。特に設定はしていません。
2010.11.23UP