Ich kampfe.

 




 これじゃだめだ。
 まだ、まだなんだ。
 もっと。もっと。
 もっと、うまくなりたい。



「・・・・・・!」
 はっと目が覚めた。
 咄嗟に見た時計の時刻は、もうそろそろ起きなければならない時間だった。
 子どもの自分。
 周りには大人たちばかりがいて、口々に自分のヴァイオリンの素晴らしさを賞賛する。
 けれどそのどれもが耳に入らない。
 ただもっと上手くなりたい、ただそれだけを思いながら、唇を噛み締めて俯く。
 最近よく見る夢だ。
 コンクールが始まってから、頻繁に見ているような気がする。
 一つの自分の通過点にしかならないコンクールなのに。
 自分自身の何が、子どもの頃の夢を見せるのだろうか。
 
「そんなこと」

 考えたって始まらない。
 軽く頭を振って、身を起こした。 

 今日という一日が始まる。
 光の見えないトンネルにいる自分は、また僅かな出口を探し回る時間が、始まるのだ。
 自分の求める音楽を見つけるまで。
 ずっとずっと、自分自身と戦う日々。










ヒトリゴト。(ブログより

言葉の意味は「私は戦う」だそうです。
香穂子視点でのお話も浮かんだのですが、「私」という言葉に捕らわれずに月森視点ならばどうなるんだろう、と思って書いてみました。
短すぎ・・・

 

 

2010.11.25UP