Sie werden wieder geboren.

 




 天羽、冬海、森の4人でケーキ屋さん巡りをしよう、と言い出したのは香穂子だった。

「だって私たちもうすぐ卒業でしょ?天羽ちゃんも森さんも働き始めたらなかなか会えなくなっちゃうし」

「あんただって、結婚したらウィーンでしょ?会えなくなるのはあんたじゃないの」

「・・・実はそれもあったりして」

 えへ、と舌を出して笑う香穂子に、天羽が「もう、しょうがないねこの子は」と苦笑した。

「ね、いいでしょ?今度の日曜日!」

「私は大丈夫」

「・・・私も、大丈夫です・・・」

 森も冬海も予定が空いている。天羽も「あたしだって空いてるわよ!」とにっこり笑った。

「じゃあ決まりね!11時に駅前の噴水で!」





 かくして当日。
 とりあえず良さそうなところから片っ端に行くという無謀極まりない計画で、更に女性4人という姦しい以上の姦しさで賑やかに街を歩く。

「ウィーンにはいつ?」

「結婚してもすぐに行けるわけじゃないみたい。ビザの申請もあるし。だから、早くて暮れあたり、かな」

「その間は何してるの?」

 うーん、と香穂子が首をかしげた。

「バイトしてお金稼ぐか、ボランティアもいいかなあって」

「王崎先輩みたく?」

 うん、と頷く。

「香穂先輩、ヨーロッパは福祉に力を入れてますから、ボランティアはウィーンでもできますよ」

 最近、ようやくきびきびと・・・それでも天羽や森にしてみればマイペースだが・・・した口調で話すようになった冬海が言った。

「アルバイトして社会を勉強しておくっていうのも、いいと思います」

「確かにねー」

 森と天羽が同時に頷いた。

「結婚したら家庭に入っちゃうわけでしょ?社会を知らないっていうのも、後々大変だっていうからねえ」

 それはそうだなと香穂子も相槌を打った。

「よし、じゃあケーキも食べつつ、バイト先も探しつつ。行ってみよう!」






「それにしても、あんたが月森くんと結婚ねえ・・・」

 3軒目のケーキ屋さんで、季節のタルトを頬張りながら天羽がまじまじと香穂子を見る。

「想い続けた甲斐があったってもんだね」

「想い続けるなんて綺麗なものじゃなかったけどね」

 ただ忘れられなくて引きずっていただけのような恋。
 それがこうなるとは、香穂子自身思っていなかった。

「月森先輩が留学した後の香穂先輩は、少し見ていられませんでしたけど・・・でも、今の香穂先輩は」

 3人が自分を見ていることに気付いて顔を赤くしながら、それでも続けるのは冬海の意思の強さ。

「何だか、綺麗です。生まれ変わったみたいです」

「いいこと言うねえ冬海ちゃん!よし、これあげる」

 上に乗っていたラズベリーと桃を、天羽が冬海の皿に載せた。

「生まれ変わる、ね。確かにそんな感じだね」

「だって、もう人生安泰だもんねー!」

 大学卒業後の進路なんか心配しなくていいなんて羨ましい!と森と天羽に茶化されて「もう!」と香穂子が頬を膨らませた。

「そんなんじゃないよ!・・・でも、ありがとね、冬海ちゃん」

「あ、いえ・・・」

 小さな体を小さくして、冬海が俯いた。

「遠回りしちゃったけどね。でも、これから埋めていけばいいんだよ」

「うん」

 よし次行こう!と森が元気良く立ち上がった。



 次のケーキ屋さんをどこにするか、わいわいと皆で相談しながら歩いていると、香穂子の携帯が鳴った。着信音ですぐにわかる。・・・月森からだ。

「お、ダンナから?横から見るなんて無粋な真似はしないから、ゆっくり読んでくれたまえ」

 天羽が肩を叩きながら笑う。もう!と手を上げても叩きはしないことをわかっているが、天羽が笑いながら逃げていった。
 慣れた手つきでフリップを開ける。



 TITLE:次の帰国
 本文:今頃は「ケーキショップを巡り歩いている頃だろうか。天羽さんが教えてくれた。こちらのケーキもおいしいようだから、楽しみにしていてくれ。
 次の帰国だが、急遽予定が空いたので、明日日本に戻る。先日は慌しくウィーンに戻ってしまったから、君のご両親にもご挨拶したいと思っている。ご都合を聞いておいてくれるだろうか。これから空港に向かうから、何か連絡事項があれば携帯にくれると助かる」



「あ、明日〜っ?!」

 素っ頓狂な声で叫んだ香穂子に、何事かと3人が振り向いた。

「明日、月森くんが帰ってくるって・・・」

 冬海は嬉しそうに顔を赤らめて「良かったですね、先輩」と言ってくれたが、後の二人は・・・

「ちょっと突然すぎるじゃない。髪、大丈夫?今から行こうか?」

「突然時間ができたから、香穂子の顔見に帰ってくるって?今までそうやってれば良かったのにあの男」

 言いたい放題である。

「・・・っていうかさ、この時間から考えると」

「既にダンナは機内、じゃない?」

「あ・・・」

 香穂子が呆然と立ち止まった。
 途端に3人が・・・主には天羽と森だが・・・きゃあきゃあと大喜びして飛び跳ねた。

「時間指定して送ったんじゃないの?いやあ、ダンナも隅に置けませんなあ」

 最後の一文から考えると、おそらくサーバーの関係で受信するのが遅かったのだろうと思うが、そんなことはこの二人には関係ない。

「うちに、挨拶に来る、って・・・」

「香穂子さんを僕に下さい、ってやつ?で『うちの娘はお前みたいな男にはやらん!』てちゃぶ台ひっくり返すの?」

 ちゃぶ台がないからそれはないし、両親は月森の事を知っている。高校の頃に何度か家に上がってもらったこともあるし、夕飯だって食べていったこともある。けれど、大学に入ってから・・・正確には月森が留学してから・・・姿を見せなくなって、次第に元気をなくしていった香穂子に、何か思う所はあるはず だ。

「ど、どうしよう・・・」

「まあそう心配しなくても」

「明日は明日の風が吹く、ってね」

 どこまでも無責任な天羽と森のやり取りに、香穂子が本気で不安になったとわかった冬海が、ぎゅっと抱きついた。

「あ、え・・・冬海ちゃん?!」

「香穂先輩。大丈夫です。・・・大丈夫ですから。いざとなったら、私のお姉さんになってくださいね」

「・・・え?」

 数秒、全員が固まり、一番最初に我に返ったのは冬海だった。

「あ、私・・・あの・・・何てことを・・・」

「・・・冬海ちゃん・・・」

「何てカワイイこと言うのかなこの子は〜!」

 先輩達にぐりぐりされながら、冬海が笑う。

「ありがとね、冬海ちゃん」

 香穂子が笑いすぎで涙を拭いながら、冬海を見下ろした。

「冬海ちゃんは、ずっと私の妹だよ!」

 明るく笑う香穂子の笑顔に、冬海が嬉しそうに笑い返した。












ヒトリゴト(ブログより
言葉の意味は「貴方(彼ら)は生まれ変わる」だそうです。
大学時代は笑ってもどことなく暗かった香穂子が、月森との結婚が決まったら明るくなったことで「生まれ変わった」ということを・・・書きたかった、ん・・・です・・・
特にオチなしですが・・・うちの冬海ちゃんは天然ですな・・・
両親への挨拶話は、どっかに書いたな・・・どこだか忘れてしまいました(おいおい


2010.11.27UP