嵐のような君と手のひらの中身




 はいこれ、と唐突に渡された小さな包み。
 反射的に手を差し出してしまってから、はたと気付いた。
「日野?」
「はーい、香穂子さんです。じゃなくて、これ。あげる」
 改めて手の中の包みを見る。淡いブルーのストライプ。ロイヤルブルーのリボン。
「これは?」
「ふふ。開けてみて?」
 何だろうと思いつつ、リボンをしゅるりと解いた。

「ヴァイオリンの・・・タイピン?」
「正解!コンサートに行く時とかに・・・ああ、出る時じゃなくて、聴きに行く時ね、使えるかなあって思って」
 タイピンの先に、小さくヴァイオリンが形取られている。細かい所も出来る限り細工が施されていて、精巧なものだ。
「タイピンってちょっと渋いかなあって思ったんだけど・・・」
「いや、ありがとう。大切に使わせてもらう」
 確かに高校生の自分にはあまり使うことのないアイテムだ。けれど、こういったものなら使えそうだと思う。
「良かった」
 嬉しそうに笑う香穂子にもう一度礼を言って、手の中のタイピンを見つめた。
 ふと気付いて問いかけてみる。
「何故俺にくれるんだ?」
「あげたいから、じゃダメ?」
「・・・別に、構わないが・・・」
 ハンカチやフォトスタンドなどももらったことがあるから、香穂子からの「理由なきプレゼント」にはある意味慣れている。
「遅れちゃったけど、誕生日プレゼントだよ」
「・・・え?」
 聞き直して、ようやくすとんと言葉の意味を飲み込んだ。
 誕生日。
「月森くん、誕生日だったんだってね。おめでとう」
「・・・ありが、とう・・・」
 学内コンクール真っ只中のライバルに誕生日プレゼントなど贈る人の気が知れないとは目の前にいる少女には言えないが、内心嬉しいと思う自分がいるのもまた事実で。
「もらってくれて、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう、日野」
 どういたしまして、とにっこり笑うと、来た時と同様、嵐のように去っていく。
 ぽつんと残された月森の手の中にあるタイピンが、太陽を反射してキラリと光った。






ヒトリゴト。(ブログより

学内コンクール中です。
嵐のようにやってきて嵐のように去っていく。そうじゃなかったら気付きかけている自分の気持ちをうっかり喋ってしまいそうで。
ということで、余計な事を言わずに去ってしまった香穂子さんなのでありました。
去年はすっぱり忘れてて(おい)、今年は風邪でダウンしつつ頑張りました・・・!遅れちゃったけれども。
月森くん、はぴば!

 

2011.4.27UP