| たとえば、きみのわらったかお |
じゃーん!と効果音つきで登場した人物に、月森が盛大なため息をついた。
「そんなイヤそうな顔しなくたっていいじゃないの」
「君の普段の行動がそうさせてるんだろう」
「失礼ね」
両手を腰に当てて頬を膨らませた女子生徒・・・天羽が「まあそれよりもさ」とにっこり笑った。経験上、こういう展開はいい事ではない。
「アンケートを・・・」
「断る」
にべもなくきっぱりと言い切り、隣でハラハラと見守っていた香穂子に「いくぞ」と言うだけ言うとさっさと歩き出す。
「ちょっと待ってよ!無記名形式のアンケートだからさ!誰が書いたかなんてわかんないから!答えるだけ答えてくれないかな!」
と月森の背中に叫びつつ、おろおろしている香穂子に「ということでヨロシク!」と用紙を押し付け・・・もとい、手渡したのだった。
「それで?」
「いいじゃない、無記名形式だっていうんだし」
「答える義理はないが」
「答えない義務もないでしょ?」
ぐ、と月森が珍しく押し黙る。ふふーん、と香穂子が得意そうに胸をはった。
「月森くんに口で勝つとなんか嬉しいなあ」
「・・・・・・」
空気が一気に低下したのをすかさず感じ取った香穂子が「今日だけだから、ね?」と首を傾げ・・・月森はこのポーズに弱い・・・更に黙らせたのだった。
「んーと、なになに?」
報道部アンケート
Q1.付き合っている人はいますか?
Q2.いると答えた人にお尋ねします。性格を一言で言うと?
Q3.直してほしい所はありますか?
Q4.どんな所が好きですか?
Q5.10年後も一緒にいると思いますか?いないにマルをした人はどんな人と一緒にいたいですか?
「1番。いる、にマル。2は・・・優しい所かな」
優しいと自分を評したことに月森はかなり驚いた。
「優しい・・・だろうか。俺は、君に」
「うん優しいよ。ヴァイオリンのことは厳しいけどね。で、3番」
自分の回答を忘れて、月森が香穂子の指先を見つめている。どう回答するのか気になって仕方がない。
「んーと、直してほしい所ねえ・・・なし」
かいかぶりすぎじゃないのか?と思うあたり、少なくとも自分がどういう性格をしているのか自覚はあるらしい。
「4番。どんな所が好きですか。んー、全部って書いたらダメかなあ」
「・・・香穂子・・・。君の中で、俺はどういう風に映っているんだ?直してほしい所もないなんて」
「だって事実だもん」
「・・・・・・!」
月森、撃沈。
「さて最後!10年後も一緒にいると思いますか。・・・・・・・・・・・・よし、できた」
にこにことアンケート用紙を二つに折ってしまった。口に出さないで書いたようだ。
「教えてくれないのか?」
「ヒミツです〜」
語尾にハートがついたと思うほど上機嫌に香穂子が笑う。更には「はい、月森くんの番!」と指差した。
「俺は家で・・・」
「これ今日までだよ。下に書いてあるじゃない」
「・・・・・・」
ペンどうぞ、と手渡されてしまったら、書かざるを得ない。
むすっとしたまま、月森がペンを受け取った。
「はい、じゃあ1番。付き合ってる人はいますか?」
いる。
「2番、性格を一言で」
前向きで明るい。
「へー、・・・こほん。3番、直して欲しい所は?」
少し強引な所。
「・・・強引かな、私」
「次は・・・」
どんな所が好きか、という質問を見て、月森が固まった。
「で?どんな所?」
ほんの今までへこんでいたのに、この立ち直りの早さ。これを書こうとして香穂子に止められた。
「もうちょっと何かないの?」
「何か、と言われても・・・」
考え込んだ月森に「ちょっと、どうしてそこで考えるの?!」と足をジタバタしてみるが、思いつかないものは思いつかない。
「・・・例えば、君の笑った顔、でもいいのだろうか」
「・・・!」
今度は香穂子が固まった。あまりにも固まるから月森が不安になってくる。
「香穂子?」
「そ、そ・・・そそそそそそ」
「そ?」
「・・・そういうことを、必殺『月森くんスマイル』でさらっと言わないで!」
「は?」
きょとんとした月森の表情も珍しい。
「更に間近で見ちゃったし!あーどうしよう心臓口から飛び出すかと思ったよ!」
「香穂子」
「・・・ナンデショウカ」
「好きだよ」
「・・・・・・!」
今度こそ顔を真っ赤にして氷のように固まった香穂子に、月森が小さく声を上げて笑った。
香穂子には内緒だが。
「問5。10年後も一緒にいるか・・・」
10年先も、50年先もだと書いておいた。
そして二人は知らない。
二人に渡されたアンケート用紙には、天羽だけがわかる秘密のマークがあったことを。
「ふふふ、二人ともラブラブよのう・・・」
などとニヤニヤしていたかどうかは、天羽しか知らない。
ヒトリゴト。
全ジャンル共通タイトル企画!(え?
2011.5.20UP