約束〜胸の痛み〜




 

「じゃあね日野さん、また明日」
「うん、また明日ね!」

教室で何気なく交わされる「明日」という約束。
そんな約束がなければ不安で不安で押しつぶされそうなほど子どもな僕。


【約束〜胸の痛み〜】


彼女を見たのは本当に偶然。
公園の隅で、ヴァイオリンを楽しそうに弾いていた。
僕にはできなかった、ヴァイオリンを愛しく想うこと。嫌いではなかったけれど、僕は早々に限界を知ってしまったから。
拙いかもしれない、けれどヴァイオリンが大好きだと全身で奏であげる彼女の姿勢は、あの頃の僕にはなかった。
そんな遠い存在だった彼女に焦がれて。探して。辿り着いた時には傍らに僕じゃない奴がいた。
それでも良かった。
僕の全てで、彼女を守りたい。傍にいられるなら「友達」という肩書きだって厭わない。
彼女が奏でる音を聴いていたい。
紡ぎ出される先は僕じゃなくても。
それでもいい。彼女が奏でる音色が僕の全てなんだ。
僕じゃない奴を想って奏でるあの音に惹かれてしまったのだから。
だから僕はまたその音を奏でる彼女に会うための約束を、何気なく取り付ける。
誰よりも一番近くにいられる教室の、君の隣の席で。
「また、あした・・・」

また、明日。

些細な一言でも、僕には大事な「約束」。
また明日も君に会える。

君は知らない。
そんな約束にすら怯えていること。
そんな約束がなければ僕は隣にいられないんじゃないかと思ってしまう不安。
そんな約束でさえ。

甘い、胸の痛みを与えてくれる。
僕の、大事な、いとしいひと。




 
ヒトリゴト。


カミサマの言うとおり!出品ボツネタです。