だれのもの?




 天気がいいから今日のお昼は森の広場にしようとメールが来た。
 授業が少し押して、辿り着いた時にはこうなっていた。

「あっ、月森くん!こっちこっち!」

 最初に気付いたのは、火原。隣には柚木が笑顔でこちらを見ていた。

「あ・・・月森先輩、こんにちは」

 音楽の知識や探究心には勝てないであろう、後輩の志水。その隣には控えめだけれど芯の強い、冬海。

「・・・・・・」

 何故君までいるんだと喉まで出掛かって、飲み込んだ。
 とことん馬の合わない土浦が。
 香穂子の隣に座っている。
 ・・・隣といえば。

「何突っ立ってるんだい、月森?皆君を待ってたんだよ」

 どことなく掴めない転校生まで。

「これは、一体」

 どうなってるんだと続くはずの言葉は、加地によって遮られた。

「うーん、まあ成り行きってやつ?」

「やっほー」

 後ろから聞きたくない声までが飛び出した。

「あ、天羽ちゃん!こっちこっち」

 香穂子が天羽と月森が座れるスペースを作っている。

「私も入っていいかな」

 月森のクラスメイトであり、先日のコンクールでは香穂子の伴奏者を務めた森が立っていた。
 勿論だよと香穂子が言えば、誰も反対する者はいない。

 ・・・何故こんなに人がいるんだ・・・






 月森くん待てないからって先に食べ始めちゃったと言われれば、遅れた自分に非があるのだからそれは仕方がない。
 さりげなく香穂子の隣に座ると、加地はにやりと笑い、土浦は面白くなさそうに顔を背けた。
 それぞれに話の輪ができていたようで、月森達が座るとまた話が再開された。

「で、結局どうなったの?」

 一通り食べ心地もついた頃。
 天羽が香穂子に向かって話しかけた。

「何が?」

「ヴァイオリンロマンスよお」

 全員が一斉に固まった。天羽は気付かない。

「誰かとくっついたりしてないわけ?」

「私も興味あるなあ」

 森が乗ってきた。月森を面白そうに眺めながら。

「え、ええっと・・・」

 助けを求める視線をこちらに送られても困る。月森と香穂子が付き合っていることは、まだ二人しか知らない。
 森と加地と土浦は薄々気付いているようだったが。
 別に隠すことでもないのだが、こういう場面で知られるのは、月森はあまり好きではない。
 それを察知しての視線なのだろうが・・・

「そんな話題を皆の前でさせて、何か楽しいことでもあるのか?」

 仕方なく助け舟を出す。
 楽しいっていうか、と天羽が悪びれもせずに答えた。

「読者のニーズ?」

「お前やっぱりソコなのかよ!」

 土浦が突っ込んだ。

「仮に日野が誰と付き合うことになったって、別に関係ねえだろ」

「おおいにあるわよ!普通科からの参加者、しかもヴァイオリンでよ!27年来のヴァイオリンロマンスに興味ない人なんていないわよ!」

「・・・ここにいるが」

 月森がぼそっと言った。しかし彼の発言は「興味のない人はいない」に対してではない。
 香穂子が弾かれたように月森を見た。
 勘違いした天羽が「月森くんは興味なくても、他の読者が・・・」と弁明している。
 月森の発言の意図に気付いたのは、天羽以外の全員だった。
 それぞれどこか納得したように頷いている。

「そっか、やっぱり・・・そうだったんだ」

 加地がぼそっと呟いた。
 意外なものを見たとでも言いたそうに、森が自分を見ているのに気付いていたが、知らないふりをした。

「そういうことだ」

 弁当を片付け終えて、月森が立ち上がる。

「この後練習室を押さえてあるんだが、・・・香穂子」

「あ、うん行くー」

「それでは、柚木先輩、火原先輩、失礼します」

「皆も、また一緒にお昼ゴハン食べようね!」

 今度は完全に固まった全員を置いて、二人が立ち去った。






「結局」

 呆然と、天羽が呟いた。

「あの二人がくっついたってこと?」

「そのようね」

 森がにっこりと笑った。

「なんとなくそうじゃないかと思ってたけど」

「・・・私も、そう思ってました・・・。月森先輩、雰囲気が変わりましたよね・・・あと、音も・・・」

「冬海さんもそう思う?私もクラスで見てる限りでは、だいぶ変わったなーって思ってたのよ。人と話す時なんて冷たさがなくなってきたし」

 男性陣は一様に黙り込んでいる。何を考えているのかはわからないが。

「でもまあこれでターゲットは決まったわ!」

 天羽が小さくガッツポーズを作った。程ほどにねと森が返す。

「私もできる限りは協力するわ。あんなに楽しそうな月森くん見てるの楽しいし」

「・・・お主もワルよのう、森〜」

「お代官様には敵いませんわ〜」

 二人であははと笑う声に、男子生徒は・・・起きているのかわからない志水を除き・・・大なり小なりため息をついた。







ヒトリゴト。(ブログより

天羽はこういう空気読まない人じゃないと思うんだけど、流れの都合上・・・
森と天羽ペアのやり取りは書いてて楽しいです。