愛を語るにはまだ早いけど

 




コンクールが終わってしまえば、俺たちを繋ぐものは何もない。
またそれぞれの生活に戻るだけだ。
俺は音楽科で。
日野は普通科で。
けれど、繋がってしまった。
ヴァイオリンという名の糸で。

想いを告げて。
同じ想いを返してくれた。
それだけで良かったはずなのに、心のどこかで足りないと訴える自分がいる。
隣を共に歩くだけで充分だったのに。
ヴァイオリンを一緒に奏でるだけで良かったのに。

足りない。

それだけでは足りない。
きっと何度「好きだ」と言っても、満たされはしないだろう。
かと言って、もっと深いものを伝えればいいのかと問われれば、それは否だ。
でもそれは、まだ伝えてはいけない言葉。
まだ俺たちは自由に自由が手に入らない、未熟なものでしかない。
その自由を得た時に君が傍らにいてくれたら、きっと。
言える気がする。

「君を・・・」







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