| この恋には底がない |
恋は盲目とはよく言ったものだと思う。
大人の庇護を受けなければならない自分たちには、まだそんな盲目的な恋愛など早すぎるけれど。
けれど、わかる気もする。
この想いは、尽きることを知らない。
時々持て余してしまうほどの想いを、どこにも持っていけない。
だから、俺はピアノを弾く。
ヴァイオリンで弾くたびに君を思い出してしまいそうだから。
ピアノでなら、ここにいる時だけ思い出せばいいのだから。
何度か日野の練習に付き合って、ピアノの伴奏をしたことがある。
それは今までの俺にはなかった時間だった。
父の伴奏や、母との連弾もしたことがないわけではないが、あんなふうに優しい音が出なかった。
彼女の音につられるようにして紡ぎ出された音は、俺がずっと願って止まなかったもの。
いとも簡単にそれを引き出した彼女に、俺は内心狼狽し。
同時に得心した。
君を想う音だから。
ヴァイオリンだけでなく、ピアノを弾いている時でさえ・・・ただの伴奏者の代わりだというのに・・・俺が隠そうとしている想いが音色に乗ってしまう。
俺は一体、どうすればいいのだろうか。
君を想って止まないこの音と心を、俺はどうするべきなのか。
この想いは、底がない。
どれだけ想っても、尽きることが、ない。
2010.2.15UP