声をかけてお喋りする

 




 

 新学年とはいえ、クラスは持ち上がりだから新鮮味はない。
 どことなく浮かれた雰囲気や、新入生の初々しさや。
 そんなことも全く気にならない学生も、いる。

 「月森、おはよう」
 「・・・おはよう」
 クラスメイトが声をかけてきた。
 じゃあ後でと走り去っていき、月森は相変わらずのペースで教室へと向かう。
 
 「あっ」
 「・・・!」
 普通科の女子生徒が、月森を追い越そうとして持っていた荷物を派手に落っことした。
 「うわあああ・・・やっちゃった」
 彼女が勝手に落としたのだから自分は関係ないと踵を返そうとした・・・のだが。
 「あ、ごめんね、周りに散らばっちゃって」
 月森の足元にも散乱したせいで、身動きが取れない。
 盛大なため息をついて、月森もしゃがんだ。
 「・・・ありがとう、拾ってくれて」
 「別に。拾わなければ俺が遅刻してしまうから拾っているだけだ」
 「・・・ごめん」
 カサリと数枚の紙が手に当たった。
 課題などのプリントかと思いながら拾い上げる。
 「楽譜?」
 ああそれね、と他の荷物を拾いながら女子生徒が教えてくれた。
 「音楽の授業で、今やってるの。先生から出された曲の内、自分で好きなの選んで、自分なりにアレンジしてみるんだよ」
 「普通科でも編曲の授業をやるのか?」
 「編曲なんていうほどすごいことじゃないよ。アレンジするのは五線紙一枚分だから」
 それにしても。
 「一行しか埋まっていないが」
 「あはははー。見なかったことにしてー」
 締め切りは今日なのだとけろっと笑う。
 「音楽は午後からだから、他の授業とか休み時間とかに頑張るからさ」
 これで全部だね、と勢いよく立ち上がり、月森が手にしていた楽譜も「ありがとう」と受け取った。
 「時間大丈夫?」
 「・・・ああ」
 「ごめんね、それと、ありがとう!」
 じゃあね!と小さく手を振って女子生徒が走り去っていった。
 その後ろ姿を見送って、膝についた土を軽く払う。
 「賑やかな生徒だ」
 いつもと違う出来事。そういったことにペースを乱されることが嫌いだ。
 でも。
 
 ずっとずっと遠くで、予感はあったのかもしれない。
 近いうちに、また彼女に会うという、予感。

 そんな予感を言葉にできずに、もやもやした気持ちを抱えて、月森はもう一度振り返った。
 走り去っていった女子生徒は、もう既に姿は見えなかった。














ヒトリゴト。(ブログより

・・・捏造ですよ、ええ。こんなイベントなかったですよ・・・
こんな出会いもいいんじゃないかなーということで。

 

 

2010.12.3UP