勇気を出して手を握る

 




 

 初夏の学校帰り。
 まだ明るい夕暮れの空。
 付き合うようになって、一つ、叶えてみたい事がある。
 脳裏を掠めたのは、つい昨日のこと。
 今朝からずっと香穂子の指先ばかりを見ていることに、当の香穂子は気が付いていた。

「私の手、何かあるの?」

「え?・・・いや」

 香穂子が手を目の前に翳して、ひらひらと振る。月森が気付かれた恥ずかしさで僅かに頬を赤らめた。

「怪我には気をつけてるつもりだけど。・・・何か気になることでもあった?」

「いや、その・・・」

 手を、とかすかに聞こえたが「手が、何?」と耳を澄ませる。

「手を・・・あの」

 なかなか言い出せない月森を、根気強く待つ。
 口を開きかけては閉じ、を繰り返して、とうとう意を決して香穂子の目を見つめ返した。



「手を、繋いでも・・・いいだろうか」



「いいよ」

 あっさりと返ってきた返事に目を見開く。

「いいのか?」

「うん、いいよ。はい」

 月森が見つめていた手を差し出されたものの、自分の手を伸ばせない月森に「しょうがないなあ」と笑って、空いた手に絡めた。

「か、香穂子」

「こうしたかったんでしょ?」

 やっぱり月森くんの手は冷たいねえ、と笑って小さく揺する。

「君の手は暖かいな」

「・・・お子様体温て言いたいの?」

「いや」

 何かを言いかけて口を噤む。先が出てこないことを不思議に思って月森を見上げると、端正な横顔。
 笑っていた。

(うわ、・・・綺麗だなあ・・・)

 ぎゅ、と少し力を入れると「どうした?」と優しい視線が降りてくる。
 ううん、と首を振って、交差点の信号を見上げた。
 隣で自分を見つめる視線が優しかった。
 








ヒトリゴト。(ブログより

アッサリめで。
私の中の月森は、行動に移すまでウダウダ色んなことを考えてそうですが、一度成功すると躊躇しなさそうな気がします。

 

2010.12.6UP