謝罪を君へ(赦してはくれないだろうけど) another

 




 

 どうしようもなく愛しくなって。
 どうしようもない衝動に身を任せてしまいたくなる。
 けれどそれは許されない。
 まだ二人に積み重なる問題は数多く残っているのだから。



 一緒にいたい。
 でも自分の音楽をもっと突き詰めたい。究めたい。
 そうするには、彼女の存在はあってはならない。

「でも」

 月明かりに満ちた自室で、冴え渡る月を見上げながら一人ごちた。

「俺は音楽を選ぶ。そうすることで君を失ってしまうのだとしても、俺には音楽しかない。君を失った音楽になるのかもしれない。それは俺の望む音楽じゃない・・・それでも」

 君を、君だけを・・・選べない。



 所構わず香穂子を抱きしめて、一秒でも離したくない。
 ずっとずっと傍にいたい。いてほしい。
 自分の隣で共にヴァイオリンを奏でてくれるならば。

「どんなにか、幸せだろう」

 たかが十数年しか生きていない。けれど、出会ってしまった。
 この先の自分の全てを委ねたいと思える人に。
 けれど、それは「今」じゃない。



「・・・香穂子」

 迷わずにヴァイオリンを選ぶ自分を、彼女は恨むだろうか。受け入れてくれるだろうか。
 お互いにお互いを想うことに疲れきって、惨めな恋になりはしないだろうか。
 そんなふうにしたくない。でも、そこで終わってしまうのならば、そこまでなのかもしれない。
 別れを選ぶことも、もちろん選択肢の一つとして残さなければならない。香穂子は望まないだろうけれど。
 将来の為に。
 今一時の別離を選ぼう。・・・だから。



「すまない、香穂子・・・」

 小さく小さく、震える声で漏らした言葉が、月の光にさらされて淡く掻き消えた。
 きっと許してはくれないだろうけれど。
 今、・・・今だけ。
 謝罪を、君に。


















ヒトリゴト。
夜寝る前に浮かんだ別バージョン。
本当は香穂子に抱きついて「離れたくない・・・!」って(月森的に)みっともなく取りすがるシーンになるはずでしたが・・・おっかしいなあ(書いたの私
私の中で、月森は音楽を迷わず選ぶと思っています。けれども選んだその手から零れ落とした中に香穂子も含んでしまったという申し訳なさをブツブツ語って(酷い言い草)頂きました。
音楽で繋がっている限り、二人の道はどこかで交わると信じているからこそ、一時の別れを。長いのか短いのかわからない時間を越えれば、きっと二人はまためぐり合えるはずだから。と思っているといいなと。

最近、週に一度のペースでしか更新できていませんが、頑張ります・・・!

2011.4.14UP