触れた冷たい唇 Side K

 




 雲ひとつない青空。
 この先のずっとずっと向こうに、大好きな人がいる。
 空を見上げる香穂子の髪が、風になびく。

「おはよう、月森くん。今日もいい天気だね」

 空へ向かって。
 この彼方にいる、あなたに向かって。
 私はいつも語り続ける。
 今日はきっといい音が出る、そんな気がしながら。
 青空の中を歩き出す。

 最後に必ずする習慣。
 人差し指と中指を唇に押し当てて。
 空へ。

 冷たい風に乗って。
 彼の元に辿り着く頃には、暖かくないかもしれないけれど。
 きっと暖め直してくれるはずだから。

 届け。
 この、恋心。







2010.2.16UP