まだ少しくすぐったい距離

 




 大切な人と一緒に目覚める朝。
 寝起きの悪い彼は、まだ夢と現実の間を行ったり来たりしている。
 醒めるかな、どうかな、という境界線にいる時が一番幸せなんだと、恥ずかしそうに言ってたっけ。



 閉じられた瞼。
 睫毛長いなあとか、寝顔がカワイイなあとか眺めていると、綺麗な眉がピクンと動いた。

「かほこ」

 少し舌足らずに私を呼ぶ。はあい、と返事をすると満足そうに微笑んで毛布を被る。

「ちょっと、また寝るの?もう起きようよ」

「あと5分・・・」

 朝起きるときの口癖。「あと5分」。指定した時間通りに起きられた試しなんかないのに。
 苦笑いしてベッドから抜け出す。捕まえようとした腕があとちょっとのところで空を切ってシーツに落ちた。
 最初は捕まえられてたけど、最近は3回に1回はこうして成功するようになれた。

「いつまでも捕まる香穂子さんじゃないんですよー」

 脱ぎ散らかされた自分のパジャマを手早く来て、キッチンヘ向かう。






「香穂子」

 まだどこか寝ぼけたような顔で、ようやく蓮が起きてきた。

「おはよう。ご飯ちょうどできるところだよ。顔洗ってきてくださーい」

 こくん、と頷く。子どもっぽくてかわいい。大好きな仕草のひとつだ。・・・本人には言わないけれど。



 出会った頃は、こんな朝を迎えられるようになるなんて思いもしなかった。
 一緒に朝を迎えるようになれたのは嬉しいんだけど、時々夢じゃないのかなって思ってしまう。
 幸せすぎて。少し、怖い。



 まだ少し慣れないけど、ずっとこうしていられたらいいなと思う。
 ずっと、ずっと。

「大好きだよ」

 小さく、ちいさく。
 呟いてみる。
 まだ少し開いている距離を埋める、魔法の言葉。
 そうしたら、ほらね。
 優しい腕が私を包みこんでくれる。

「俺も、好きだよ」

あいしてる、と囁く声と一緒に。










ヒトリゴト。

このお題は全部王道でいくべきかと・・・
書いてて楽しいから、それでいいのだー!

2010.2.18UP