夕食の片づけを済ませると、ティーセットを持って香穂子がリビングに現れた。
そこから先は俺の仕事になっている。
小さなクッキーをかじりながら、香穂子はその手順を眺めるのが好きなのだという。
「蓮の綺麗な指が動くのを見るのが好きなんだ」
「好きなのは指だけなのか」
「・・・ばかっ!知らないっ!」
クッションで軽く叩かれた。
笑いながらも紅茶を淹れる手は休まない。
彼女が好きだと言ってくれるものはたくさんある。そういったひとつひとつを、大事にしようと決めた。
「今日はお買い物に付き合ってくれてありがとう」
「いや、俺も楽しかった」
一人で見る世界も、二人で見れば全く違うものになる。
些細なことで笑い合える事も、君がいなければ俺はずっと知らずに生きていただろう。
「おかげで、明日はたくさんヴァイオリンが弾けそうだよ」
「そうか、それは良かった」
今はこんな曲を練習しているんだと言われれば、その曲は昔俺もやったなと思いながらアドバイスをしていく。
音楽の話になると、二人とも時間を忘れてのめりこんでしまう。
気付けば紅茶が冷め切って、ポットも冷たくなっていた。
「そろそろ休もうか」
「うん、そうだね」
久しぶりに蓮の音楽講釈が聞けて嬉しかったと満足そうに笑った。
おやすみと言えば、おやすみと返ってくる。
香穂子を腕の中に収めながら目を閉じた。
「・・・あのね」
「ん?」
「蓮に言わなきゃいけないことがあるの」
いつになく真剣な声音に、俺は何かを感じた。
「どうした?」
口を開いては閉じる、を繰り返す。根気よく、俺は香穂子の言葉を待った。
何度めかに口を閉ざした後。ぽつりと、彼女が言った。
「・・・かもしれない」
「え?」
聞き返した俺に、意を決したように見返して。
今度はもう少しはっきりと。
「赤ちゃん、できたかもしれない」
一瞬、彼女の言葉が理解できなかった。
「・・・え?」
「毎月のね、あれが・・・来ないの・・・」
検査薬がないからわからないと、不安そうに告げる声に。
俺は、どう反応していいかわからなかった。
「明日、病院に行ってみよう」
「でも蓮、仕事が・・・」
「仕事はどうにでもなる。君の体のほうが大事だ」
力を込めて抱きしめていいのか迷って、少しだけ、力を込めた。
「そうだったら、いいな」
「・・・うん」
緊張していたのだろう、香穂子の大きな瞳から涙が零れた。それを指で掬って、啄むような口付けをひとつ。
「失われてしまう命もあるが、生まれてくる命もある。その中で俺たちは出会えたんだな」
「うん」
「ありがとう、香穂子」
またひとつ、大きな雫が流れ落ちた。
まだきちんとわかったわけではないが、何となく、そうであってほしいと願う。
彼女が言い出せずに秘めていた事を教えてくれた事に感謝しながら。
新しく創られているかもしれない命に感謝しながら。
俺たちはまたひとつ、夜を越える。
ヒトリゴト。
終わらないかと・・・(汗
こんなマジメな話になるはずじゃなかったのになあ・・・おっかしいなあ・・・(書いたの私
香穂子が月森にナイショで買い物して「じゃーん!」って見せるはずだっ・・・た、のに・・・
なぜこうなる(だから書いたの私
そこから先は俺の仕事になっている。
小さなクッキーをかじりながら、香穂子はその手順を眺めるのが好きなのだという。
「蓮の綺麗な指が動くのを見るのが好きなんだ」
「好きなのは指だけなのか」
「・・・ばかっ!知らないっ!」
クッションで軽く叩かれた。
笑いながらも紅茶を淹れる手は休まない。
彼女が好きだと言ってくれるものはたくさんある。そういったひとつひとつを、大事にしようと決めた。
「今日はお買い物に付き合ってくれてありがとう」
「いや、俺も楽しかった」
一人で見る世界も、二人で見れば全く違うものになる。
些細なことで笑い合える事も、君がいなければ俺はずっと知らずに生きていただろう。
「おかげで、明日はたくさんヴァイオリンが弾けそうだよ」
「そうか、それは良かった」
今はこんな曲を練習しているんだと言われれば、その曲は昔俺もやったなと思いながらアドバイスをしていく。
音楽の話になると、二人とも時間を忘れてのめりこんでしまう。
気付けば紅茶が冷め切って、ポットも冷たくなっていた。
「そろそろ休もうか」
「うん、そうだね」
久しぶりに蓮の音楽講釈が聞けて嬉しかったと満足そうに笑った。
おやすみと言えば、おやすみと返ってくる。
香穂子を腕の中に収めながら目を閉じた。
「・・・あのね」
「ん?」
「蓮に言わなきゃいけないことがあるの」
いつになく真剣な声音に、俺は何かを感じた。
「どうした?」
口を開いては閉じる、を繰り返す。根気よく、俺は香穂子の言葉を待った。
何度めかに口を閉ざした後。ぽつりと、彼女が言った。
「・・・かもしれない」
「え?」
聞き返した俺に、意を決したように見返して。
今度はもう少しはっきりと。
「赤ちゃん、できたかもしれない」
一瞬、彼女の言葉が理解できなかった。
「・・・え?」
「毎月のね、あれが・・・来ないの・・・」
検査薬がないからわからないと、不安そうに告げる声に。
俺は、どう反応していいかわからなかった。
「明日、病院に行ってみよう」
「でも蓮、仕事が・・・」
「仕事はどうにでもなる。君の体のほうが大事だ」
力を込めて抱きしめていいのか迷って、少しだけ、力を込めた。
「そうだったら、いいな」
「・・・うん」
緊張していたのだろう、香穂子の大きな瞳から涙が零れた。それを指で掬って、啄むような口付けをひとつ。
「失われてしまう命もあるが、生まれてくる命もある。その中で俺たちは出会えたんだな」
「うん」
「ありがとう、香穂子」
またひとつ、大きな雫が流れ落ちた。
まだきちんとわかったわけではないが、何となく、そうであってほしいと願う。
彼女が言い出せずに秘めていた事を教えてくれた事に感謝しながら。
新しく創られているかもしれない命に感謝しながら。
俺たちはまたひとつ、夜を越える。
ヒトリゴト。
終わらないかと・・・(汗
こんなマジメな話になるはずじゃなかったのになあ・・・おっかしいなあ・・・(書いたの私
香穂子が月森にナイショで買い物して「じゃーん!」って見せるはずだっ・・・た、のに・・・
なぜこうなる(だから書いたの私