半分シアワセに夏を過ごそう

 




 

 二人で過ごす、初めての夏。
 夏休みは毎日のように月森の自室でヴァイオリンを習い、時々は街へ出て買い物してみたり、ぶらぶら歩いてみたり。
 そんなある日のこと。

「海?」

 エアコンの効いたカフェの一角で、月森が僅かに目を見開いた。

 うん、そう。海に行きたいの。とアイスカフェオレをこくんと飲んだ香穂子が頷いた。

「街を歩くのもいいけど、たまにはお弁当持って、海に行きたいなあって」

「泳ぐのか?」

「それはどっちでもいいんだ。月森くんと海に行けたら、後は何して過ごしても」

 できたら泳ぎたいけど。
 視線がそう雄弁に語っているから、きっと泳ぎたいのだろう。夏の日差しは苦手だが、香穂子と過ごすのならば悪くないと思い直した。

「わかった」

 やった!とぱちんと手を叩いた香穂子に思わず微笑んでしまいながら、アイスティーのストローに口をつけた。

「月森くんと過ごせる初めての夏だからね、いーっぱい楽しまなくちゃ!」

「ヴァイオリンの練習に学校の課題もある。そういつも遊ぶわけにいかないだろう」

「だからこそ、だよ!遊ぶ時は遊ぶ。勉強する時は勉強する。弾く時は弾く。その時その時を全力で頑張るだけだもん」

「全力、か」

 彼女はいつも全力投球だ。短時間に集中して一気にこなす。その後の達成感の感じ方も、きっと人より多いのだろう。

「だから、この夏も全力で幸せいっぱいに過ごすんだ!」

ね、と少し首を傾げた香穂子に「・・・いや」と返す。

「全力、では・・・正直、困る」

「え、なんで?」

 一緒に付き合わされる月森がもたないとか、そんな心配をしたのだろう、香穂子の表情が微妙に翳る。

「半分だ、香穂子」

「半分?」

 どういう意味かと問えば少し考えるようにして、月森の綺麗な指先が顎を撫でた。

「君と、俺とで、半分だ。君が100%楽しむのもいいが、俺は君と分け合いたい」

 楽しさも、辛さも、何もかも全て。
 半分に分け合いたい。

「・・・うん」

 きっと未来の自分たちが今の自分たちを振り返る時に、その想いが共有されているから。
 だから半分がいい、と月森は言ったのだ。

「うん。じゃあ、この夏、半分幸せに過ごそうね?」

 ああ、と月森が目を細めて頷いた。

 

 

 

2011.1.29UP