| 色んな温かいものに囲まれて僕は生きていると最近になって知った |
いつも一人だった。
忙しい家族は、いつも家にいない。それが普通だと思ってきたし、それでいいとさえ思っていた。
家族から蔑ろにされているわけじゃないことを知っていたから。それに、母は自分だけのものではない。何千、何万という人々が、母の演奏を待っているのだから。だから俺だけではなく、母の音楽を待ち望む人たちを優先させてほしかった。
例え、自分が風邪を引いて寝込んだりしたときでも。
ヴァイオリンがあれば、それでよかった。
高校に入っても、友達付き合いなど一切してこなかったし、必要だとも思っていなかった。寧ろ不要だとさえ思っていた。そうして距離を取り続けて来た結果を、俺は不満にも思うことはなかった。
「でも、そんなの淋しいよ」
困ったように笑う彼女が目の前に現れてから、俺は自分で作り上げてきた壁に直面する。それを瓦解しなければ、俺が欲しいと望む音楽は手に入らない。
もがく俺を、彼女は手を差し伸べてくれた。引っ張り上げようとさえしてくれた。
ほぼ同時期に、家族からの思いを知る機会もあった。壁を作ってしまった俺を心配していたこと。それを聞いて、俺は・・・色々な温かいものに囲まれて生きているのだと、最近になって知った。
だから今度は。
俺が返していく番だと思っている。
できることは少ないが、このヴァイオリンで返していけると思っている。
そう、信じている。
そうして俺は今日もヴァイオリンを弾く。
温かい気持ちを少しでも返せるように。
俺が受け取った何倍もの返礼となるように。
2010.12.23UP