果て無き輪舞

 




 ヴァイオリンを弾きたいと言ったのは香穂子。
 4年もの間、一度も連絡を取らなかったということは、当然、二人でヴァイオリンを弾くこともなかったわけで。
 もうこれから先、お互いを失う不安がなくなったことで、堰を切ったように「二人で弾きたい」という気持ちが溢れてきた。

「いい?」

「ああ。もちろん構わない」

 笑んで頷けば、この上なく嬉しそうに笑った香穂子が「何やる?」と声を弾ませた。

「君に任せる」





 夕方、というには少し早い、けれども昼間というには少し薄暗い。
 そんな色合いの空を眺めていると、月森の腕がそっと伸びてきた。

「どうした?」

 優しい、優しい、その声を。
 4年間ずっと聞きたかった。柔らかく自分の名前を呼んでくれる月森の傍に、いたかった。

「追いかけたかったの」

 唐突なその言葉は、月森にしかわからない僅かな苦悩を滲ませていた。

「月森くんのこと追いかけてウィーンに行こうって思ったこともあった。でも、重たいって思われたくなくて怖かった。知らない誰かが月森くんの隣にいるのかもしれない・・・そんなの、見たくなくて」

 でも想わずにはいられなかった。

「あんなに苦しい想いをするなら諦めたらって言われて。でも諦めようとするとね、月森くんの夢を見るんだ」

「夢?」

 うん、と月森の腕の中で香穂子が頷いた。

「一番最初に会った時の夢。綺麗で、澄んでて、優しい音でアヴェ・マリアを弾いてる月森くんがね、出てくるの。それで私が聴いてると弾くのを止めちゃって『君に資格はあるのか?』って言うの」

 資格とはどういうことだろうか。
 そう思っていることがわかったのだろう、くすりと香穂子が笑った。

「何の資格なんだろうって私も思ったよ。ずっとずっと考えて、考えて・・・ひとつ、わかった気がする」

 これ以上、月森への想いを諦めてしまったら。
 きっと夢の中の月森はもう二度とその音楽を聴かせてくれない。

「それで、資格、なのか」

 月森を想う気持ちを諦めたら、夢の中でも現実でも、香穂子は月森の音楽を聞く「資格」を失う。
 だから夢の月森は問うたのだ。



「君に資格はあるのか?」



 結局こうして再会できて、もう失うことはなくなった。まだ正式には言っていないが、月森は香穂子に傍にいてほしいと思っている。ずっと、どちらかが先に逝くまで。
 夢の中の自分が香穂子に問い続けてきたから、彼女は自分を諦めなかった。想ってくれていた。
 その「資格」を失わずにいてくれたことが、嬉しかった。



「香穂子」

 腕に少しだけ力を込めた。
 柔らかな香りが、月森の鼻腔をくすぐる。首筋に額を乗せると、さらりとした髪が香穂子の首を滑り落ちる。

「もう少し、一緒に弾いてくれないか」

「・・・喜んで」
 



 
 何度一緒に弾いても足りない。飽きることがない。
 いっそのことこのままひとつになれてしまえたらいいのに。
 それは果ての無い輪舞のように、ずっと二人の周りを廻り続けていた。








ヒトリゴト。(ブログより


一週間に一本のペースになりつつあるぞ、私・・・
薄○鬼の他にも○執事にもハマりそうな私、うえーどんどん手広くなっていく・・・
ボキャブラリーがワンパターンになってきているので、色んなサイトさんの作品を読ませて頂いて勉強してるのですが、そうすると自分のネタの引き出しが空っぽになるんですよね・・・なぜだろう。
今は、よし、書くぞ!って思わないと書けない状態です。かといって読まずにはいられないっていう・・・

 

 

 

2011.1.18UP