時々持て余す、この感情を。
俺は、どうやって消化したらいいのだろう。
| その腕に閉じ込めて |
彼女はいつだって自由だ。
誰とでも気さくに話すし、そんな香穂子だからこそ、俺は彼女を好きになった。
でも、時々。ほんの少しだけ。
そんな彼女を、束縛、してみたくなる。
「それでね、土浦くんてば・・・月森くん?」
他愛のない会話。
学校からの帰り道。音楽の話、お互いの話、色々なことを知り合えるから、この時間は好きだ。
けれど、時折現れるこの感情をどうにかして消し去ってしまいたくて、俺はさっきから彼女の話に上の空だった。
「どうしたの?なんだか今日は元気ないみたい」
「・・・いや」
何でもないと言いかけて、更に香穂子の不信を煽る。
具合が悪いのかと問われて、それにははっきりと首を振る。
「じゃあどうしたの?さっきから上の空だよ」
「・・・香穂子」
どう言ったらいいんだろう。
言葉を探す俺に、香穂子は辛抱強く待っていてくれる。
「公園に、行かないか」
手を引いて、公園へと続く道を歩く。
「何か飲むものでも・・・何がいい?」
「私買ってくるよ」
座ってて、と滑り台を指差し、香穂子が公園の外に設置してある自動販売機へと向かう。
言われるまま座り、どう切り出そうかと考えあぐねる。
「お待たせ。紅茶でいいかな?」
「ああ、ありが・・・」
ふと触れた香穂子の手。
暖かい、柔らかな手。女性特有のしなやかさがある。
この手で、君の音楽が作り出されていくのだな。
あの、俺を魅了してやまない音楽を。
「つ、つきも・・・」
その手を強く引き寄せる。
勢いで倒れこむ体を抱きとめた。
「・・・香穂子」
気付いてくれるだろうか。
気付かないでほしい。
相反する気持ちが一瞬の間交錯する。
たった一言、君の名前を呼んだだけなのに。
何故、こんな気持ちになるのだろう。
「君が、好きだよ。いつでも、どこにいても。・・・なのに」
香穂子は大人しく俺の言葉に耳を傾けているのがわかる。サラリとした彼女の髪を梳く。
「時々、思うんだ。いつも自由な君を」
この腕に閉じ込めてしまえたら。
どんな風に、君は。
「私は、私だよ」
くぐもった声が聞こえた。香穂子の手が重なる。暖かい手。
「でも、私は月森くんのものでもあるんだよ。いつだって、どんな時だって。だから私は」
いつでも受け入れるから。
「拒む理由なんてないもの。好きなようにして、いいんだよ?」
「・・・そんな事を言うと・・・」
止まらなくなる。
香穂子を好きだという感情が。全てを奪い去ってしまいたいという感情が。
溢れて、飲み込まれる。
唇から時々漏れ聞こえる吐息さえ閉じ込めてしまいたい。
乱暴な衝動が止まらない。
彼女を優しく愛してやりたいと思うのに、自分の体が自分のものではないような感覚に襲われる。
「・・・外は、ヤだ」
「・・・香、穂」
子、とは続かなかった。彼女から口付けてきたからだった。
小さく、水音がする。今さきほどまでの深いそれとは違う、乱暴な俺の気持ちを宥めるような。
「ここからだと、俺の家のほうが近い」
「・・・うん」
少し乱してしまった制服を整えてやりながら、髪に口付けた。
「こんな俺でも、いいのか?」
ふふ、と香穂子が笑う。その微笑が、この上なく綺麗だと思った。
「私はどんな月森くんでも、好きだから」
「・・・ありがとう、香穂子」
こんな衝動、彼女を好きになるまで知らなかった。
知らないほうが良かったのかもしれない。
でも俺は俺だと彼女が言ってくれるから。
だから俺は囁く。
君が認めてくれた、もう一人の俺で。
「今日は、覚悟しておいてくれ。どこで満足するか、俺自身にもわからない」
ヒトリゴト。(ブログより
こういう系統のほうが書きやすいかもしれないことに今気付いたジジツ。うおー・・・
同じ時にもらってきたツンデレ的お題も書いてて楽しいのですが、なんかこっちも楽しいかも・・・
2010.10.2UP