| 君の声が聴きたくて |
これで何度目だろう。
もう暗記してしまった香穂子の携帯の番号。
最後の一桁を押せずに受話器を下ろして、またかけ直す・・・の繰り返し。
「・・・ダメだ」
下ろした受話器に向かって大きなため息を吐き出す。
電話をした所で、何を話せるというのだろう。
何の約束もなく発った俺を、きっと君は怒っているだろう。
今更、何食わぬ顔で君の声が聞きたかったなど・・・言えるわけがない。
こんなにも、こんなにも君の声が聞きたいのに。
あの時の俺の弱さが、今の俺の首を絞めている。
君の声が聞きたい。
君に会いたい。
君に触れたい。
どれも叶わぬ夢だ。
「・・・そう、夢、だ」
自らそうさせたのだ。
これから先、誰を選ぼうとも。
俺には責める術などない。
けれど、いつか。
俺を選んでくれるのならば、頼みたいことがある。
君のその声で、俺の名前を呼んでほしい。
俺が今聞きたいと願う、君の声で。
2010.8.1UP